126 出雲東部最後の最高首長墓・山代原古墳を発掘調査  「石棺式石室」の完全形態を確認


 島根県埋蔵文化財調査センターでは、八雲立つ風土記の丘地内において、重要遺跡の保護を目的とした調査を継続して行っています。令和2年度は、昨年度に引き続き、松江市山代町に所在する山代原古墳の発掘調査を行いました。このたび、古墳の形や規模、石室の構造などが明らかになりましたので、調査成果を公表します。

1.山代原古墳について
(1)古墳の概要:山代原古墳は、古墳時代後期(6世紀~7世紀前半)に出雲東部の最高首長墓域であった大庭・山代古墳群に所在し、この古墳群の中では最後に築造された最高首長墓と考えられます。墳丘上部は近世以降に大きく削られているため、古墳の形や規模は不明でしたが、埋葬施設である横穴式(よこあなしき)石室(せきしつ)が開口しており、研究者には明治時代からよく知られていました。横穴式石室は「※石棺式(せっかんしき)石室(せきしつ)」と呼ばれる出雲地域独特の型式で、県内最大かつ精緻な構造です。

(2)調査期間:令和2年5月11日~6月30日
古墳名称:山代原古墳(旧称:永久宅後古墳)
   場  所:松江市山代町地内     

 (3)調査の成果と意義
① 山代原古墳は東西辺が23.5mの方墳であることが判明しました。また、墳丘東側と北側には堀割状の溝を掘って墳丘を際立たせている可能性が高まりました。
② 石室前室は後世に破損して床石のみが現地に残っています。その床石は厚さが約75㎝あり、他の石材との接合部には「組み継ぎ」、「ほぞ継ぎ」などの精緻な加工がみられます。また、通例の横穴式石室は壁石を地中に据えて上部構造を支えますが、当古墳では壁石を床石上に据えて、すべての上部構造を支える構造であることが判明しました。
③ これは、山代原古墳に代表される7世紀代前半の「石棺式石室」にしか見られない際だった構造上の特徴と考えられます。
④ これらの構造は、6世紀代の「石棺式石室」が段階的に進化を遂げて到達した「完成形態」であり、当時いち早く用いられた国内最高度の技術であったと考えられます。

2.山代原古墳速報写真展の開催
  調査成果を公開するために、速報写真展を開催します。
なお、新型コロナウイルス感染症予防のため現地説明会は実施しません。

 ・日  時:令和2年7月30日(木)~ 9月13日(日)
 ・開催場所:ガイダンス山代の郷(松江市山代町470-1)
       開館時間9:00-16:30
       休館日:毎週火曜日
       入館無料
       電話0852-25-9490

3.報道機関への現地公開
 ・日時:令和2年7月29日(水)14:00から16:00
 ・場所:山代原古墳現地(松江市山代町561)
 ・対象:山代原古墳の石室前のみ公開
  ※駐車場がないため、車は「ガイダンス山代の郷」(上記)に駐車して下さい。

※「石棺式石室」
  古墳の埋葬施設である横穴式石室の一形態。6世紀後半から7世紀前半にかけて出雲東部地
域で築造され、今のところ34基が確認されています。特徴は、①家形石棺を巨大化したよう
な外観、②四方の壁、天井、床を1枚の切石で構成することを志向、③玄室入り口は「刳り抜
き玄門」、とすることです。

 ※基底部の構造が判明している石棺式石室を持つ古墳
・古天神古墳(6世紀後半:松江市)前室に床石を持たない。
・岩屋後古墳(6世紀後半:松江市)前室の壁石は地面で支え、床石はその間に敷いてある。
・向山1号墳(6世紀末:松江市)前室の壁石の一部が床石に載る。