154  県内初史跡出雲国府跡(しせきいずもこくふあと)で奈良時代の甲冑の小札(こざね)を確認


島根県教育庁埋蔵文化財調査センターでは、史跡出雲国府跡(松江市大草町)の実態を明らかにする発掘調査の報告書作成を進める中で、奈良時代の小札と呼ばれる甲冑(小札甲)(別紙第4・5図)を構成する板状の部品を発見しました。下記のとおり島根県立八雲立つ風土記の丘で速報展示します。

1.小札発見の経緯
○平成27~令和2年度に出雲国府跡の中枢施設である政庁域の発掘調査を実施(別紙第2・3図)
○政庁域出土鉄器について、既発掘資料も含めX線写真撮影を実施し17点の小札を確認した。

2.出雲国府跡出土の小札について
○小札とは、甲冑(小札甲)を構成する小さな板状の部品である。
○小札は政庁域の建物を建てるための整地層中、政庁域内の遺構などから出土している。
○複数枚の小札を有機質素材で束ねた状態で出土しているものもある。
○7世紀後半~8世紀中葉までの時期の異なる小札が出土している。

3.小札出土の意義
○古代の甲冑類の出土自体が珍しく、奈良時代の小札では島根県内で初確認。
○小札の出土した整地層は9世紀代に整地されたと考えられる。7世紀後半~8世紀中葉の間につくられた小札が長期間保管され、甲冑本来の使い方ではなく、それらを整地層内に埋納、あるいは散布して、地鎮などの祭祀が行われた可能性がある。
 ○時期差のある複数型式の小札を用いた地鎮等の祭祀は平城京や長岡京、大宰府、秋田城などで行われており、古代において全国的にみても重要な政治的拠点地域で行われていることがわかる。
 ○出雲国府跡ではこのほかに土師器甕(かめ)を埋設する祭祀を行っており、出雲国府跡政庁域で行われた多様な祭祀形態の一端が明らかとなった。

4.八雲立つ風土記の丘での小札速報展示の開催
・内  容: 小札速報展示
・期  間:令和4年1月29日(土)~令和4年2月28日(月)
・開催 場所:島根県立八雲立つ風土記の丘展示学習館(松江市大庭町456番地)
       開館時間9:00-17:00(入館は16:30まで)、休館日:毎週火曜日
入館料:一般200円、大学生100円、小・中・高生無料、電話0852-23-2485

【参考】
 ○国府・政庁域とは
・奈良時代の役所で現在の都道府県庁のような施設である。地方政治の中心となる政庁をはじめ、周辺の公的施設を含めて「国府」と呼ぶ。
 ・出雲国府は現在の松江市大草町に置かれ、これまでの発掘調査で政庁域、後方官衙、国司館、工房地区などが発見されている。
 ・『出雲国風土記』によると周辺に意宇郡家や黒田駅家、意宇軍団などのさまざまな施設があったことが知られており、現在の県庁や市役所などが建ち並ぶ松江市殿町周辺の一大官庁街を想像させる。
 ・政庁域は国府の中枢域である。政庁域では、建物はコの字に配置され、政務や様々な儀礼が行われたと考えられる。