114 月山富田城(がっさんとだじょう)の城下町遺跡で石見銀山産と推定される切銀を確認


 古代文化センターでは、テーマ研究「中世山陰の戦争と地域社会」(令和3~5年度)の一環として、富田川河床(とだがわかわどこ)遺跡(安来市広瀬町)の出土品を再調査し、石見銀山産の銀が使われたと推定される1点を含む切銀(きりぎん)4点を新たに確認しました。

1 再調査の概要
  ⑴ 調査対象の出土品
     富田川河床遺跡(安来市広瀬町に所在する尼子氏、毛利氏、吉川氏、堀尾氏の
     居城「月山富田城」の城下町遺跡。寛文6(1666)年の水害で廃絶)において、
     昭和55~57年度の第6~8次調査で出土した出土品
  ⑵ 調査方法
     出土品から切銀4点を抽出した。その成分調査を鳥越俊行氏(奈良国立博物館
     保存修理室長/石見銀山遺跡客員研究員)に依頼し、令和5年に携帯型蛍光X線
     分析装置で実施
  ⑶ 主な確認内容 ※銀の産地推定は成分調査等の結果に基づく
   切銀1 銀産地(推定):石見銀山 成分:銀と鉛などのほか微量のビスマス
       時期:戦国時代(16世紀後半) 特徴:石州銀の切遣い(きりづかい)
   切銀2 銀産地(推定):伯州銀山 成分:銀と鉛などのほか微量の金
       時期:戦国時代(16世紀後半)から江戸時代初期(1666年)
       特徴:円盤状の灰吹銀を切遣い
   切銀3 銀産地(推定):伯州銀山 成分:銀と鉛などのほか微量の金
       時期:戦国時代(16世紀後半)から江戸時代初期(1666年)
       特徴:円盤状の灰吹銀を切遣い、「米判」の極印(ごくいん)
   切銀4 銀産地(推定):(不明) 成分:銀と鉛などのほか微量のビスマス
       時期:戦国時代(16世紀後半)から江戸時代初期(1666年)
       特徴:分銅形の極印、内部の文字は「出雲」の可能性あり

2 成果の意義
  ・ 複数枚の切銀が発掘調査で出土したのは全国初
  ・ 富田川河床遺跡のような城下町の遺跡で、流通貨幣の切銀の確認は全国初
  ・ 尼子・毛利氏の石見銀山、吉川氏の伯州銀山といった大名の鉱山領有と、各鉱山の
    産銀による銀貨製造、城下町での銀貨流通に関する重要な成果となった

3 企画展「山陰の戦乱-月山富田城の時代-」(成果の公開)
  ・ 期間 令和6年10月11日(金)~12月8日(日)
  ・ 会場 島根県立古代出雲歴史博物館(島根県出雲市大社町杵築東99-4)