131 松江城下町遺跡白潟地区で戦国時代の繁栄を示す遺物が出土


[10月27日19時59分 別添画像集を訂正しています]
島根県埋蔵文化財調査センターでは、大橋川河川改修事業に伴う発掘調査を行っています。このたび松江市白潟地区の白潟本町と魚町で実施している発掘調査において、松江城下町形成以前の戦国時代の町跡に伴う遺構・遺物や、江戸時代に宍道湖を埋め立てて大規模に屋敷地を造成していた様子が確認されましたので、調査成果を公表します。

1.松江城下町遺跡について
(1)遺跡の概要 
松江城下町遺跡は、旧松江市街地の地下に眠る江戸時代の城下町跡で、江戸時代初期に堀尾氏によって造られはじめ、松平氏によって整備されました。実際にこれまでの発掘調査では橋北地区を中心に、江戸時代の武家屋敷や町屋跡が多数確認されています。
城下町形成以前の中世には、白潟地区や末次地区に町が存在していたことが文献史料から窺われますが、これまで明確な遺構は確認されていませんでした。
(2)今年度の調査  
期間:令和4年5月16日~12月中旬(予定)
面積:松江城下町遺跡 白潟1B区 640㎡
           白潟2区  610㎡

2.主な調査成果について
  今回の調査では、江戸時代の町跡の下層から室町時代後期から戦国時代の遺構・遺物が初めて確認され、中世から江戸時代にかけての町の形成過程を示す重要な成果が得られました。
(1)白潟地区で戦国時代の町の遺構を初めて確認 
白潟本町の調査区では、江戸時代の遺構の下層から戦国時代以前の鍛冶炉や井戸のほか、多数の柱穴が検出されました。城下町整備以前の白潟地区の町は白色砂からなる砂州の上に存在しました。松江城下町遺跡で砂州に掘られた戦国時代以前の遺構が確認されたのは初めてです。
(2)山陰初の戦国時代の鍵をはじめとした多種多様な遺物を発見
国内外の陶磁器のほか、青銅製品や鉄製品など多種多様な遺物が出土しました。中には鍵、犬形土製品のような通常の集落では見られない特殊なものもあります。戦国時代の鍵の出土は山陰地方で初めてです。また、魚や貝、鳥獣類の骨などの食料残滓も多く認められ、当時の食生活を窺うことができます。
(3)現在に至る松江の町の形成過程を確認
魚町の調査区では、現在の地番境に建物の壁基礎となる石列や石垣が確認され、明治期以降の屋敷地割が江戸時代にさかのぼる様子が確認されました。また、宍道湖側へ屋敷地を拡張するため、多量の石材による埋め立てや石垣・階段構築を何度も行っていたことが明らかとなりました。また、江戸時代の鍛冶屋と考えられる屋敷跡も確認され、現在調査中です。

3.調査成果と意義
今年度の松江城下町遺跡白潟地区の調査によって、宍道湖を大規模に埋め立てて城下町を形成するといった江戸時代の様子が明らかとなりました。また、初めて戦国時代の遺構・遺物を確認したことにより、当時の繁栄した白潟の町の状況が判明しました。
白潟については、明代の『籌海図編』(1562年成立)でも記されており、舟運の要地として広く知られています。その様子は国内外の陶磁器を始めとした多種多様な遺物が出土していることからうかがうことができます。
舟運により繁栄した白潟の町を基盤とし、江戸時代の城下町が整備されて行くといった形成過程が判明したことが調査の重要な成果といえます。

4.現地説明会の開催
 調査成果を公開するために、現地説明会を開催します。
(1)日  時:令和4年11月3日(木:文化の日)10:00~11:30、13:30~15:00
(2)集合場所:松江市市民活動センター(スティックビル)4階401研修室
(松江市白潟本町43 島根県庁より徒歩約15分)
      ※集合場所で受付を行ってから発掘現場へ移動します。
(3)新型コロナウイルス感染症対策
・感染症対策のため受付にて手指の消毒、検温、連絡先の記入を頂きます。 
・現地説明会会場ではマスクの着用のうえ、係員の指示に従ってください。
・開催日当日に発熱・咳等の風邪症状があった場合は参加をご遠慮ください。
(4)その他  小雨決行
・駐車場はありません。公共交通機関あるいは近隣の有料駐車場をご利用ください。