130 文献に残された「たたら跡」を全面調査


 埋蔵文化財調査センターでは、江の川河川改修事業に先立ち、江津市松川町太田に所在する桜谷鈩跡(さくらだにたたらあと)の発掘調査を実施しています。このたび、江戸時代から明治時代にかけ製鉄を行った「たたら跡」などが確認されたことから、調査成果を公開します。

1 今年度の調査と成果
⑴ 調査箇所 江津市松川町太田 桜谷鈩跡(調査対象面積:700㎡)
 (桜谷鈩跡:江戸時代の文化人で那賀郡太田村の庄屋の石田春律(いしだはるのり)が経営したことで有名)
⑵ 調査期間 令和5年6月~12月(予定)
⑶ 遺跡の位置 江の川に面した小丘陵の裾部に位置
⑷ 主な調査成果
①たたら製鉄に用いられた「高殿(たかどの)」跡を確認しました。高殿跡は隅丸長方形(16.9×15.2m)で、全国的にみても類例のない極めて珍しいものとなります。
②製鉄炉の地下に防湿・保温のために設けられる「本床(ほんどこ)」(約7.0×1.0m)と小舟を乾燥させるために設けられる「跡坪(あとつぼ)」などを確認しました。
③高殿内で、炭置き場である「炭町(すみまち)」、と砂鉄置き場である「小鉄町(こがねまち)」、炉を構築するための粘土置き場である「土町(つちまち)」などを確認しました。
⑸ 調査の意義 
 調査の結果、類例のない特殊な平面形の高殿たたらであることがわかり、複雑な地下構造、施設配置を確認し、高殿たたらの変遷を考えるうえで重要な発見となりました。文献資料も残されている著名なたたら跡を全面調査したことによって、江の川流域のたたら製鉄と地域の歴史を具体的に考える貴重な資料を得ることができました。
2 現地説明会の開催
・ 日時:令和5年11月3日(金・祝)10:00~11:30(小雨決行)
・ 開催場所:江津市松川町太田 桜谷鈩跡発掘調査現場
・ 駐車場が限られます。できるだけ乗り合わせてお越しください。